心淋(うらさび)し川

江戸、千駄木町の一角を流れる、小さく淀んだ心淋し川。そこで生きる人々も、人生という川のどん詰まりでもがいていた―。悪戯心から張形に仏像を彫りだした、年増で不美人な妾のりき。根津権現で出会った子供の口ずさむ唄に、かつて手酷く捨てた女のことを思い出す飯屋の与吾蔵。苦い過去を隠し、長屋の住人の世話を焼く差配の茂十…。彼らの切なる願いが胸に深く沁みる、第164回直木賞受賞作。

西條奈加著 集英社 704円(税込)

わかれ縁 狸穴屋お始末日記

「もう、嫌だ!」定職にもつかず浮気と借金を繰り返す亭主の元を飛び出した絵乃は、ひょんなことから離縁の調停を得意とする公事宿「狸穴屋」の手代見習いとなる。そこに舞い込んでくるのは、いずれも家族の“情”がこじれた難題ばかり。果たして絵乃は一人前の公事師となり、自身の離縁も成し遂げられるか!?

西條奈加著 文藝春秋 726円(税込)