猫の刻参り

江戸は三島屋の次男坊富次郎は、変わり百物語の二代目聞き手。飼い主の恨みを晴らす化け猫、悪党壊滅に挑む河童、懺悔を泣き叫ぶ山姥が登場する数奇な身の上話を聞き捨て、一話ごとに墨絵にしている。一方、兄・伊一郎の縁談を巡って、三島屋は大騒動に巻き込まれてしまう…。狂気に塗れた苦界を生き抜く女と、化生の者どもが織りなす怪奇譚。

宮部みゆき著 新潮社 2,530円(税込)

ゲーテはすべてを言った

高名なゲーテ学者・博把統一は一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出会う。ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求めて、膨大な原典を読み漁り、長年の研究生活の記憶を辿るが―。ひとつの言葉を巡る統一の旅は、創作とは何かという深遠な問いを投げかけながら、読者を思いがけない明るみへ誘う。若き才能が描くアカデミック冒険譚!第172回芥川賞受賞作。

鈴木結生著 朝日新聞出版 1,760円(税込)

あえのがたり

小説を読み、未来につなぐ。能登半島応援チャリティ小説企画。加藤シゲアキ「そこをみあげる」神に見放され、何一つうまくいかなかった男が山で見つけたのは打ち捨てられた船だった。 朝井リョウ「うらあり」ある島を訪れた男女4人。人々はあたたかく迎えてくれたのだが。 今村昌弘「予約者のいないケーキ」このサプライズケーキは、一体誰に提供すればいいのだろう。 蝉谷めぐ実「溶姫の赤門」加賀藩主・前田斉泰への輿入れを前に、徳川の姫は思い悩んでいた―。 荒木あかね「天使の足跡」大事なミニブタも夫もいなくなってしまった。あと残っているのは、娘だけ。 麻布競馬場「カレーパーティー」少数精鋭のチームに配属され、親睦を深めるための癖のあるカレーパーティーが始まる。 柚木麻子「限界遠藤のおもてなしチャレンジ」あんたがおもてなししている場合なの?友の危機に集まったのは『スーパーゴリオ爺さんズ』。 小川哲「エデンの東」担当編集者から届いたメールに、私は激怒した。もっとわかりやすくしてほしい、だと? 佐藤究「人新世爆発に関する最初の報告」プラスチックが漂着する小さな漁村に暮らすカロイは“新聞島”と呼ばれる無人島に惹かれていた。 今村翔吾「夢見の太郎」「夢がある」と周囲に語って以来、太郎は主から疑いの目を向けられ―。

加藤シゲアキほか 講談社 2,200円(税込)

楽園の楽園

これはディストピア小説か、ユートピア小説か?大規模停電、強毒性ウィルスの蔓延、飛行機墜落事故などが立て続けに発生し、世界は急速に混乱に陥った。これらすべての原因は謎の人工知能『天軸』の暴走と考えられた。五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の選ばれし三人は、人工知能の開発者が描いたという巨大な樹の絵画『楽園』を手掛かりに、暴走する『天軸』の所在を探る。旅路の果てには、誰も想像できない結末が待ち受ける。壮大で、不思議で、だけど皮肉なアドベンチャー。

伊坂幸太郎著 中央公論新社 1,650円(税込)

歌集 ゆふすげ

三日の旅終へて還らす君を待つ庭の夕すげ傾ぐを見つつ--昭和から平成の終わりまでに詠まれながら、これまで私たちの目に触れることのなかった四六六首を収録する。よろこび、悲しみ、ときに言葉にできない驚きや共感……。うつろう時間の中で三一文字に凝縮された豊かな世界。その扉がいま開かれる。解説・永田和宏。

美智子著 岩波書店 1,980円(税込)

架空犯

誰にでも青春があった。被害者にも犯人にも、そして刑事にも―。燃え落ちた屋敷から見つかったのは、都議会議員と元女優夫婦の遺体だった。華やかな人生を送ってきた二人に何が起きたのか。『白鳥とコウモリ』の世界再び―シリーズ最新作。

東野圭吾著 幻冬舎 2,420円(税込)

このミステリーがすごい! 2025年版

36年の信頼と実績を誇る、新作ミステリーランキングブックです。表紙&巻頭では漫画『【推しの子】』を特集。作品の完結を祝し、赤坂アカ氏にお話をうかがいました。更に、デビュー20周年を記念した辻村深月氏×湊かなえ氏道尾秀介氏×加藤隆生氏(SCRAP代表)の二大対談では、ミステリーの過去・今・未来についてたっぷり語っていただいています。ゲーム×ミステリーも特集。「かまいたちの夜」我孫子武丸氏、「Fate/Stay night」奈須きのこ氏のインタビュー、「逆転裁判」巧舟氏「ひぐらしのなく頃に」竜騎士07氏「ダンガンロンパ」小高和剛氏のコラムどでゲームとミステリーの歴史をひもときます。各業界人も注目する2024年の国内&海外のミステリー小説ランキング・ベスト20、超人気作家による自身の新刊情報&特別エッセイなど、例年の人気コンテンツも充実の一冊です。

『このミステリーがすごい!』編集部編 宝島社 900円(税込)