月の立つ林で

長年勤めた病院を辞めた元看護師、夢を諦めきれない芸人、家族関係の変化に寂しさが募る二輪自動車整備士、自立を願う女子高生、仕事と家庭のバランスに悩むアクセサリー作家。下を向きがちな毎日の中で、彼らが耳にしたポッドキャスト『ツキない話』。月に関する語りを聴く中で、彼らの心も満ち欠けを繰り返しながら、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく。本屋大賞候補作となり、「読書メーター OF THE YEAR 2023‐2024」2位を獲得した、見えない繋がりが心震わす傑作小説。

青山美智子著 ポプラ社 858円(税込)

審議官 隠蔽捜査 9.5

板橋捜査一課長のキャリア観を変えたのは、共に誘拐捜査にあたった大森署時代の竜崎だった。そんな竜崎も警察庁の長瀬審議官の前では一介の中間管理職にすぎない。竜崎の家族である、冴子、美紀、邦彦。署長転出直後の部下たち。神奈川県警のトップ、佐藤本部長。さまざまな人々の目から見た竜崎伸也の素顔、そしてその凄みとは。『隠蔽捜査』シリーズへの愛が深まる、絶品スピン・オフ短篇集。

今野敏著 新潮社 781円(税込)

掬えば手には

平均的な身長体重。勉強も運動もすべてが普通。何の取り柄もないぼくはある日、人の心を読める力に気がついた。おかげで口の悪い店長の下でも難なくアルバイトを続けているけれど、新人の常盤さんだけは心を開いてくれなくて…。他者の心に寄り添うひたむきな姿をだれもが応援したくなる、究極に優しい物語。

瀬尾まいこ著 講談社 825円(税込)

成瀬は天下を取りにいく

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」幼馴染の島崎みゆきにそう宣言したのは、中学二年生の成瀬あかり。閉店を間近に控える西武大津店に通い、ローカル番組の中継に毎日映るといいだした。さらに、お笑いコンビ・ゼゼカラでM‐1に挑み、高校の入学式には坊主頭で現れ、目標は二百歳まで生きること。最高の主人公の登場に、目が離せない!本屋大賞を受賞した圧巻の青春小説!

宮島未奈著 新潮社 693円(税込)

近畿地方のある場所について

私、小澤雄也は本書の編集を手掛けた人間だ。収録されているテキストは、その多くが「近畿地方のある場所」に関連している。なぜこのような文章群を発表するに至ったのか。その背景には、私の極私的な事情が絡んでいる。それをどうかあなたに語らせてほしい。私はある人物を探している。その人物についての情報をお持ちの方はご連絡いただけないだろうか。※単行本とは内容が異なります。ご了承ください。

背筋著 KADOKAWA 880円(税込)

マイクロスパイ・アンサンブル

付き合っていた彼女に振られた社会人一年生、どこにも居場所がないいじめられっ子、いつも謝ってばかりの頼りない上司…。でも、いま見えていることだけが世界の全てじゃない。知らないうちに誰かを助けていたり、誰かに助けられたり。残業中のオフィスで、事故現場で、フェス会場で、奇跡は起きる。優しさと驚きに満ちた現代版おとぎ話。

伊坂幸太郎著 幻冬舎 792円(税込)

ババヤガの夜

お嬢さん、十八かそこらで、なんでそんなに悲しく笑う?暴力を唯一の趣味とする新道依子は、関東有数規模の暴力団・内樹會にその喧嘩の腕を買われる。会長が溺愛する一人娘の運転手兼護衛を任されるが、彼女を苛酷な運命に縛りつける数々の秘密を知り―。血が逆流するような描写と大胆な仕掛けで魅せる不世出のシスター・バイオレンスアクション!

王谷晶著 河出書房新社 748円(税込)

いつまで

悪夢を食べる獏の場久がいなくなった。さらに、医師の火幻まで姿を消してしまう。二人は、悪夢の中にいるのだという。なんとか助け出そうと若だんなが夢に飛び込むと…そこは「五年後の江戸」につながっていた!おまけに長崎屋は信じられない事態に。若だんなは、お店の危機を救えるか!?そして若だんなを助けてくれた謎の女性の正体は?時をかけるシリーズ第22弾は、待望の長編作品。

畠中恵著 新潮社 693円(税込)

栞と嘘の季節

高校で図書委員を務める堀川と松倉は、返却本のなかにトリカブトの花の栞を見つける。密かに持ち主捜しをはじめるが、同級生の女子・瀬野に栞を奪われ、焼き捨てられてしまう。これにて幕引きかと思われたその翌日、男性教師が中毒に倒れた。次から次へと現れる猛毒の栞―誰が何の目的で作っているのか。そして、瀬野は何を隠しているのか。殺意の奥にある切実さが胸を打つ、青春ミステリ長編。

米澤穂信著 集英社 990円(税込)

青瓜不動

洒落た一品をそろえる袋物屋〈三島屋〉の次男坊・富次郎は、いっぷう変わった百物語の聞き手を務めている。「黒白の間」で語られた怪談は、けっして外には漏らされない―。初代聞き手のおちかのお産が迫り、てんやわんやの三島屋を、土の匂いをまとった女が訪れた。「うりんぼ様」と呼ばれる不動明王像を連れ込んで語られたのは、行くあてのない女たちの話だった。短編「面影鬼」を特別収録した、宮部みゆき流の人情怪談!

宮部みゆき著 KADOKAWA 1,100円(税込)