よき時を思う

東京・東小金井にある、四合院造りという珍しい中国建築に暮らす金井綾乃。ある日、実家の母から、祖母・徳子の九十歳を祝う「晩餐会」の知らせが届く。出征が決まった青年との結婚、十六歳の日に下したある決断、そしてなぜ自ら豪華絢爛な晩餐会を開くに至ったのか。綾乃は祖母の生涯を辿り、秘められた苦難と情熱を知る。よき時―それは過去ではなく未来のこと。人生の真価に触れる長編小説。

宮本輝著 集英社 1,034円(税込)

タイ料理ウボンにようこそ

舞台は日本とタイ。男女の距離、親子の距離、親友との距離。物語の進行とともに、これらの距離が確実に縮まっていく。そして、爽やかな余韻を残して物語は感動の終幕を迎える。

細川敬司著 文芸社 770円(税込)

生きとるわ

公認会計士として傍目には順調な生活を送っている岡田。しかし、高校時代の仲間だった横井に五百万円を貸したことから、その人生は狂い始める。横井は他の仲間たちからも借金を重ねたあげく、姿をくらましていた。阪神タイガースのセ・リーグ優勝が決まった夜、岡田は大阪・道頓堀で偶然横井と再会する。貸した金を取り戻そうとする岡田は、逆にさらなるドツボにはまっていく―

又吉直樹著 文藝春秋 2,200円(税込)

神の蝶、舞う果て

降魔士の少年・ジェードは、神と魔物、光と闇が共に宿っているとされる、神聖でありながらも恐ろしい聖域〈闇の大井戸〉で、魔物から聖なる蝶を守る役目を負って暮らしていた。ある日、ジェードの相棒である少女・ルクランが、聖なる蝶が舞い上がってくることを知らせる〈予兆の鬼火〉に触れる事件が起きる。他の降魔士たちと違い、なぜか、〈予兆の鬼火〉に激しく反応してしまうルクランは、聖域を守る者のなかで波紋を呼んでいた。自分がなぜ、そんな反応をするのかを知りたいと願うルクランと、ルクランを守りたいと思うジェード。それぞれの思いをよそに、ふたりは壮大で複雑な運命の糸に絡め取られていく。

上橋菜穂子著 講談社 1,980円(税込)

時の家

2025年 第47回 野間文芸新人賞受賞
2025年 第174回 芥川賞受賞

青年は描く。その家の床を、柱を、天井を、タイルを、壁を、そこに刻まれた記憶を。目を凝らせば無数の細部が浮かび、手をかざせば塗り重ねられた厚みが胸を突く。幾層にも重なる存在の名残りを愛おしむように編み上げた、新鋭による飛躍作。

鳥山まこと著 講談社 2,090円(税込)

一文字助真

豊後国日出藩に生を享け、厳しい剣の修行に明け暮れ生きる若侍、猪俣小次郎。道場破りがもたらした思いがけない死をきっかけに、愛刀一文字助真を携え孤独な剣術修行の旅に出た。道中で出会った姉を捜す少女・薫子と小次郎はともに江戸吉原に辿り着くが―。若者たちが己の力で試練を乗り越え、未来を切り開こうとする。その先に見出されるふたりの「夢」の形とは。

佐伯泰英著 光文社 946円(税込)

欲望の裏 警視庁追跡捜査係

被害者の顔と指紋が潰されていて、未だに身元が特定されていない五年前の事件。その管轄だった八王子中央署の特捜が、追跡捜査係にヘルプを求めてきた。手掛かりは現場に乗り捨てられたレンタカーと被害者が持っていたUSBメモリだけ。だがレンタカーの借り主は失踪中、USBメモリ内には何の情報も残されていなかった。このたった二つの手掛かりを元に、追跡捜査係の沖田と西川が執念の捜査を辿る!大人気警察小説シリーズ、書き下ろし第十四弾。

堂場瞬一著 角川春樹事務所 924円(税込)

人間標本

人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな―。ひどく損壊された6人の少年の遺体が発見されると、社会はその事件の異様さに衝撃を受けた。大学の生物学科で蝶の研究をする榊史朗は、蝶の世界を渇望するあまり、息子を含む6人の少年たちを手にかけたと独白する。蝶に魅せられ、禁断の「標本」を作り上げたという男の手記には、理解しがたい欲求が記されていた…。耽美と狂おしさが激しく入り乱れる、慟哭のミステリ。

湊かなえ著 KADOKAWA 924円(税込)

めじろ鳴く

今は老境にあるかつての剣豪宮本武蔵のもとを柳生十兵衛の門弟が訪ねてきた。天下の剣を極めた柳生が今さら何を企んでいるのだ?訝しむ武蔵は、次第にこの門弟に心を許していく―。老剣客の気骨を活写する表題作ほか、父の仇討ちのため旅に出る若き剣士を描いた書き下ろし新作「妻手指」を収録する珠玉の全六編。著者初の短編集。

佐伯泰英著 文藝春秋 880円(税込)