不可能な過去

「一事不再理」。刑事裁判で判決が確定した人間は、同じ事件で二度裁かれることはないという原則だ。その無罪を勝ち得た被告から、裁判の十年後、当時の担当刑事に手紙が届いた。「あの事件の犯人は、本当は私でした」と。相談を受けた追跡捜査係の沖田は、被告の足跡を辿り始めるが…。一方、神奈川県警に新設される追跡捜査班のアドバイザーとして招かれた西川は、ある未解決事件が気になっていた。二つの不審な事件がぶつかる時、複雑に絡み合った謎が解き明かされる!書き下ろし長編警察小説。

堂場瞬一著 角川春樹事務所 902円(税込)

荒地の家族

元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点なのか―。あの災厄から十年余り、生活も仕事道具も攫われ、妻を喪った男はその地を彷徨い続けた。仙台在住の書店員作家が描く、止むことのない渇きと痛み。第168回芥川賞受賞。

佐藤厚志著 新潮社 1,870円(税込)

審議官 ー隠蔽捜査9.5ー

米軍から特別捜査官を迎えた件で、県警本部長とともに警察庁長官官房に向かった竜崎。審議官からの責任追及に、竜崎のとった行動とは―。さらに竜崎異動の余波は、大森署、神奈川県警、そして家族にも…。名脇役たちも活躍するスピンオフ9編を収録。

今野敏著 新潮社 1,760円(税込)

この世の喜びよ

幼い娘たちとよく一緒に過ごしたショッピングセンター。喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。かつての子育ての日々を思い出す女性―「この世の喜びよ」。ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦―「マイホーム」。父子連れのキャンプに叔父と参加した少年―「キャンプ」。

井戸川射子著 講談社 1,650円(税込)

成熟スイッチ

「昨日とは少し違う自分」へ。日大理事長就任、「老い」との近づき方…人気作家による9年ぶり待望の人生論新書!

林真理子著 講談社 924円(税込)

荒ぶるや 空也十番勝負9

京の都。祇園感神院の西ノ御門前で空也は、往来の華やかさに圧倒されていた。法被を着た白髪髷の古老が空也の長身に目をつけ、ある提案を持ちかける。姥捨の郷では眉月らが空也の到着を待ちわび、遠く江戸の神保小路ではおこんや磐音がその動向を案じる中、武者修行は思わぬ展開を迎えることに。そこへ、薩摩の影が忍び寄り…。

佐伯泰英著 文藝春秋 847円(税込)

三千円の使いかた

就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?

原田ひ香著 中央公論新社 770円(税込)

希望の糸

小さな喫茶店を営む女性が殺された。加賀と松宮が捜査しても被害者に関する手がかりは善人というだけ。彼女の不可解な行動を調べると、ある少女の存在が浮上する。一方、金沢で一人の男性が息を引き取ろうとしていた。彼の遺言書には意外な人物の名前があった。彼女や彼が追い求めた希望とは何だったのか。

東野圭吾著 講談社 968円(税込)

名探偵のままでいて

かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は、七十一歳となった現在、幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。しかし、孫娘の楓が身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻すのだった!そんな中、やがて楓の人生に関わる重大な事件が…。2023年第21回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。

小西マサテル著 宝島社 1,540円(税込)