患者の搬送を避ける救急隊員の事情が胸に迫る「迷走」。娘の不可解な行動に悩む女性刑事が、我が子の意図に心揺さぶられる「傍聞き」。女性の自宅を鎮火中に、消防士のとった行為が意想外な「899」。元受刑者の揺れる気持ちが切ない「迷い箱」。まったく予想のつかない展開と、人間ドラマが見事に融合した4編。表題作で08年日本推理作家協会賞短編部門受賞。
長岡弘樹著 双葉社 550円(込)
株式会社 山田快進堂
100歳を超えて、または100歳近くまで活躍した作家、芸術家、俳優、政財界人など八十数名による名言集。老いてなお快活に暮らす秘訣とは。「長生きするためには、退屈しないこと。僕なんか毎日忙しくて、死んでるヒマなんかありませんよ」(物集高量・作家・106歳没)、「芸術とは、どこまで大きく未完成で終わるかだ」(奥村土牛・画家・101歳没)、「創めることは未来に花を咲かせること」(日野原重明・医師・現100歳)、「いつでも腹の中は風が吹いているように軽い」(宇野千代・作家・98歳没)……。さりげないひと言に年輪を感じさせる珠玉のメッセージ集を、このたび100歳を迎えられた現役医師の日野原重明氏が編纂。氏いわく、「人生は五十歳とか六十歳で前半、後半と分かれるものではありません。ハーフタイムは、だんだんあとにきます。そして、あとにくる人生のほうが濃縮するのです」。すべての日本人に伝えたい「老いの美学」が詰まった一冊である。文庫書き下ろし。
日野原重明 編著 PHP研究所 540円(込)