親しい友人も肉親も、愛した男たちもすべて、もうこの世にはいない。ありありと感じる死者の気配を、日々、書き留めるだけだ―。病を乗り越え、九十歳を過ぎてなお、書かずにいられない衝動に突き動かされ、十年の歳月をかけて紡ぎ出された珠玉の小説九篇。
瀬戸内寂聴著 新潮社 1512円(込)

株式会社 山田快進堂
1億PVの超人気サイトが早くも書籍化! 描き下ろしイラスト満載の愛蔵版。4ヶ月限定の質問・相談サイト上で、村上春樹が答えた約3700問の中から、笑って泣いて考えさせられる名問答473問を厳選。日常のお悩みから、ジャズ、恋愛、生き方、翻訳小説、社会問題、猫、人間関係、そして愛するスワローズまで。落ち込んだとき、迷ったときに何度でも読み返したい「人生の常備薬」。
村上春樹/答えるひと フジモトマサル/絵 新潮社 1404円(込)
本書ではほかに五編の短編を収録。いずれも戦国時代の備前・備中を舞台に、昨日の敵は味方であり明日の敵、親兄弟でさえ信じられないという過酷な状況でのし上がった、乱世の梟雄・宇喜多直家をとりまく物語を、視点とスタイルに工夫をこらしながら描く。直家の幼少時の苦難と、彼でしか持ちえない不幸な才能ゆえの大罪(「無想の抜刀術」)、若く才能あふれる城主として美しい妻を迎え子宝にも恵まれた直家に持ちかけられた試練(「貝あわせ」)、直家の主・浦上宗景の陰謀深慮と直家の対決の行方(「ぐひんの鼻」)、直家の三女の小梅との婚姻が決まった宋景の長男の浦上松之丞の捨て身の一撃(「松之丞の一太刀」)、芸の道に溺れるあまり母親をも見捨てて直家の家臣となった男(「五逆の鼓」)と、いずれも直家のほの暗い輪郭を照らしながら、様々な情念を浮かび上がらせていく――時代作家としてはもちろん、ピカレスクの書き手としても十分才能を感じさせる意欲作である。
木下昌輝著 文藝春秋 1836円(込)